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覗かれる株注文データ 高速取引、個人に先回り

覗かれる株注文データ 高速取引、個人に先回り

覗かれる株注文データ


株の売買注文を出したら、何者かに瞬時に先回りされている――。個人投資家からこんな声が上がるようになったのは、つい最近のことだ。そしてその不満は、ネット証券最大手のSBI証券のユーザーからのものだ。市場でいったい何が起きているのか。探ると、超高速で売買を繰り返すHFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)業者の関与が見えてきた。2014年に米作家マイケル・ルイス氏が著書『フラッシュ・ボーイズ』で描いた米国株市場の状況が、日本でも繰り返されようとしている。
「露骨な先回りで利益をかすめ取られるようになったのは10月に入ってから。自分が注文を出した途端、さっきまで見えていた最良の板(気配値)がさっと奪われちゃうんです。その結果、不利な値段でしか約定できないことが増えており、大変な損害を被っています」。北日本地区に住む30代の男性投資家はこう語気を強める。
この男性は1日に300回を超える個別株の売買を繰り返す専業のデートレーダーだ。投資経験は10年を超えるが、最近は思った価格でトレードができなくなっているという。「体感では、約3分の1の注文が誰かに先回りされています」
■「割り込まれる感覚」
宮崎県に住む40代の男性投資家も最近起きている注文の先回りに憤る1人だ。「まるで、人気店の前で並んでいたら突然割り込まれるような感覚だ。アルゴリズムを使いこなす一部の投資家が利益を得て、大多数の投資家は損をしている。株式市場はどんな投資家にも公平であるべきだと思っていたが、そうなっていない」
こうした不満を抱える個人投資家に共通するのは、SBI証券の利用者だということだ。
SBI証券は「SOR(スマート・オーダー・ルーティング)」と呼ぶ、複数の市場で最良の値段(買いなら最も安く、売りなら最も高い値段)をつけている市場をコンピューターが自動的に判定し、その市場に発注するシステムを導入している。具体的には、東京証券取引所と、SBIホールディングス傘下の私設取引システム(PTS)である「ジャパンネクストPTS」の価格を比べ、最適な市場を選んでいる。

実は、SBI証券はそのSORの仕組みを10月に変更していた。
従来は「IOC(イミディエート・オア・キャンセル)」という執行方法をとってきた。投資家の発注時に成立可能な数量のみを執行し、約定できなかった分は即座にキャンセルする方法だ。これは、楽天証券をはじめとする他のネット証券も広く導入している。
IOCの特徴は、発注時に成立しなかった注文は直ちに取り消されるため、値段ごとに売りと買いの指し値注文の株数が並んだ市場の「板情報」に注文が表示されない点だ。このため、他の市場参加者には自分の注文が知られることはない。
一方、SBI証券が10月からSORに導入したのは「TIF(タイム・イン・フォース)」と呼ぶ注文執行の方法だ。これはIOCと違って、ある決まった時間の間だけ投資家の注文が板情報にさらされる。
SBI証券はその設定時間を「非開示」としているが、複数の市場関係者の話を総合すると100ミリ~300ミリ秒(ミリは千分の1)の範囲の中のどこか(たとえば120ミリ秒)に設定していたとみられる。
■「約定率は上昇している」
なぜSBI証券はSORの執行方法をTIFに変えたのだろうか。「板情報に指し値の注文を一瞬でもさらせば、その注文を取りに来る反対側の注文を呼び込む効果が期待できる。実際、TIF導入後にPTSでの注文の約定率は上昇しており、SORに対する顧客満足度は上がっていると思う」。坂本英文執行役員は説明する。
SBI証券は、PTS約定分は東証約定分よりも株式委託手数料を5%割り引いている。PTSでの約定が増えれば、個人投資家の手数料の支払いが抑えられる。
パソコンやスマートフォンで起動する取引専門ツールはSOR発注が初期設定になっており、利用者が自由に変えられない。
投資家からは不満の声も出ているため、数カ月後をメドに各利用者が初期設定を「SOR発注」「東証発注のみ」などに変えられるようシステムを変更する予定だ。
ジャパンネクストの売買の増加ぶりをみても、注文の約定率が上がっているという主張には一定の説得力がある。8月下旬からPTSでの信用取引を解禁されたこともあり、9月以降は売買高は右肩上がりで増えている。10月の全現物株市場(東証、ジャパンネクスト、PTSのチャイエックス・ジャパン)に占めるジャパンネクストのシェアは過去最高の5.4%に達した。

■「まるで永遠のような時間」
一方、たとえわずかの時間であっても自分の注文を市場にさらすのは「もろ刃の剣」になる。高速で売買するHFT業者にその注文を見られて、注文を先回りされるリスクがあるからだ。
100ミリ~300ミリ秒といえば人間にとってはまばたきの速さとほぼ同じ一瞬の時間だが、マイクロ秒(百万分の1)からナノ秒(十億分の1)単位のスピード競争を繰り広げているHFT業者たちからみれば「まるで永遠に感じられるようなとても長い時間」(外資系証券の電子取引担当者)。個人の注文情報を知ったHFT業者が、それを利用して利益を得るのはそう難しいことではないとの指摘は多い。
HFTの手口に詳しい複数の市場関係者の話を総合すると、たとえばこんな方法が考えられるという。
ジャパンネクストと東証にそれぞれ1株100円の売り気配が出ている銘柄があるとする。売り注文の株数は一般に売買高が大きい東証が1000株で、PTSが100株だ。このときある個人がSBI証券のSORで1000株の成り行きの買い注文を出したとする。
最良の売り気配が同水準であれば、SBI証券のSORはまずジャパンネクストに注文を流すため、そこで1株100円で売買が成立。残る900株はジャパンネクストの板情報で「1株100円、900株買い」と表示される。この表示される時間が100ミリ~300ミリ秒だ。
これを見たHFT業者はこの銘柄に900株の買い需要があることを知り、100ミリ~300ミリ秒後にはSORで東証に回ってくることを予知する。
HFT業者は先回りして東証で900株を買い、このうち800株を1円高い1株101円で売りに出す。個人の注文はSORで成り行き買いとして東証に回ってくるため、HFTは個人に1株101円で800株を売ることができる。100株は売れずに手元に残るが、これは株価の推移をみながら市場で速やかに処分する。個人の注文データを覗(のぞ)いたことで可能になる、リスクの低いトレーディング手法だ。
実際、ジャパンネクストのPTSには多数のHFT業者が参加している。
ジャパンネクストにはどの投資家でも参加できる「第1市場(Jマーケット)」と、ネット証券を通じた個人の注文と一部の大手のHFT業者だけが参加する「第2市場(Xマーケット)」が存在する。
第2市場に参加できるHFT業者は「第1市場で継続的に値段を出し続けている健全なマーケットメーカーだ」(SBIジャパンネクスト証券の山田正勝最高執行責任者)という。売買シェアなど第1市場での実績によって成績上位の4社を選んでおり、半年おきに入れ替えている。
■「入場料3倍」でも参加
ジャパンネクストは第2市場で取引できるHFT業者の具体名を公表していないが、市場関係者の間では米バーチュ・ファイナンシャル、米シタデル・セキュリティーズ、米HRT、イスラエルのイストラ(ISTRA)などの名前が取り沙汰されている。
ちなみにバーチュは2016年にジャパンネクストを運営するSBIジャパンネクスト証券の34.1%の株を取得しており、現在はSBIホールディングス(持ち株比率42.8%)に次ぐ第2位の株主だ。
HFT業者が払う第2市場の取引手数料は第1市場の3倍の水準だ。通常よりも高い「入場料」を払ってでもHFT業者たちが個人が主要参加者であるPTSで取引したがるのはなぜなのか。
「自分たちは市場に流動性を供給するというプライドを持って取引しているが、個人投資家のオーダーを見ることで簡単にもうけられる仕組みになっているのはどうかと思う」。第2市場の参加者の1社とみられるHFT業者の幹部は最近、周囲にこう漏らしている。

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諸葛孔明

Author:諸葛孔明
サラリーマンを辞めて「専業トレーダー」やっています。現在は、配当重視株7割 売買3割でやっています。
(注)「FHファンド」は、個人事業届出時の屋号です。投資顧問業ではありません!

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