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税で促す「貯蓄から投資」 取得費加算の特例見直し

税で促す「貯蓄から投資」 取得費加算の特例見直し
編集委員 前田昌孝
2018/8/29 5:30日本経済新聞 電子版





 例年通りの日程ならば、金融庁は8月末に2019年度の税制改正要望を提出する。今年は日銀が家計の投資信託保有残高を大幅に下方修正したこともあり、「貯蓄から投資へ」の政策の練り直しが求められる。金融庁は今回、相続した株式などの売却がいつになっても、「取得費加算の特例」を受けられるように見直しを要望するという。売却に期限を設けないことで、慌てて売るのを防ぐのが狙いだが、果たして奏功するだろうか。

 投資部門別売買動向によると、個人投資家はバブル崩壊が始まった1990年から18年までの29年間のうち、24カ年で株式を売り越した。29年間の累計売越額は58兆8700億円に達した。特にアベノミクス相場が始まった13年から18年8月第3週までの売越額は26兆1300億円にのぼった。「相続をきっかけに売られてしまうことも多い」(大手証券)という。個人の株式離れをどう防ぐかは大きな課題だ。




 相続時の売却のきっかけになっているのが「取得費加算の特例」だ。この特例は相続した土地や建物、株式、投信、ゴルフ会員権などを売却した場合に、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得の金額を減らせる制度だ。例えば、株式2000万円を含む1億円の財産を相続し、500万円の相続税を支払った人が、この株式をすべて売却して300万円の利益を得たと仮定すると、相続税のうち株式の相続にかかった分100万円を売却益から差し引いて税金を計算できる。

 売却益に対する所得税・住民税の税率は復興特別所得税を除くと20%なので、もし特例を使わなければ、この人は60万円の税金を納めなければならない。特例を使えば、売却益を200万円に圧縮できるので、納税額は40万円で済む。ただし、現行ルールでは特例を使うには、相続日から3年10カ月以内に売却しなければならない。

 金融庁はこの3年10カ月という売却期限をなくすように要望するもようだ。いつ売却しても特例が使えるのならば、株式や投信を相続した人は、慌てて売却しなくてもいい。全国では16年の相続財産15兆8663億円のうち有価証券は2兆2817億円に達する。売却期限がなくなれば、相続人は売却のタイミングをゆっくり検討できる。

 相続前後の株式売却を防ぐアイデアはほかにもある。金融庁は1年前の税制改正要望では、株式や投信を相続した場合の評価額を時価から引き下げるように求めていた。土地を相続する場合は、公示地価の80%程度に当たる路線価で評価される。建物を相続する場合は建築費の50~70%に当たる固定資産税評価額を使用する。ゴルフ会員権を相続する場合は市場取引価格(時価)の70%で評価される。株式や投信についても、相続税を申告するまでの価格変動リスクを考慮し、一定の割引をすべきだと主張した。

 全国銀行協会は7月19日に公表した税制改正要望で、高齢者が手持ちの上場株式などを子や孫へ生前贈与する場合に税制を優遇するように求めている。「上場株式等が相続前後に現預金にシフトする傾向を抑制し、世代を超えた中長期的なリスクマネーの確保につながる」と狙いを説明している。子や孫が株式を保有すれば、適切な議決権行使が期待できるため、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化にも役立つと訴える。

 もちろん税制をつかさどる財務省や与党税制調査会が金融庁などの要望に耳を傾けるとは限らない。代わりに売却益や配当への税率を現行の20%(復興特別所得税を除く)から25%に引き上げる議論が浮上するかもしれない。やぶ蛇になっては元も子もない。

 ただ、「貯蓄から投資へ」を「貯蓄から資産形成へ」と言い換え、証券投資の必要性を訴えてきた金融庁にとっては、頑張らなければならない事情もある。日銀が6月27日に発表した資金循環統計で、家計が保有する投信の残高を過去に遡って下方修正し、「貯蓄から投資へ」が足踏みしていたことが明らかになったからだ。改定前の統計では家計は17年末に投信を109兆円強保有しているはずだった。改定後の統計では18年3月末の保有残高は73兆2075億円に減った。

 個人金融資産全体に対する投信の割合も、改定前の統計では5.8%だったが、改定後の統計では4.0%に後退した。日銀が8月14日に公表した「資金循環の日米欧比較」によると、米国では個人金融資産の11.8%が投信になっている。ユーロ圏でも9.6%が投信だ。投信に株式等(非公開株を含む)を加えた割合も、米国は48.0%、ユーロ圏は28.8%に達しているのに、日本はわずか14.9%にすぎない。

 しかも日本ではリスク資産が高齢者に偏在している。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯調査)」の17年版によると、70歳以上の世帯(金融資産を保有していない世帯を除く)では保有金融資産は平均2512万円に達するが、20.2%に当たる507万円が株式・投信になっている。60歳代の場合は12.8%に当たる263万円なので、70歳代は60歳代の2倍近いリスクマネーを提供していることになる。

 ただ、これもさらなる高齢化や相続に伴って徐々に換金され、預貯金に振り替わってしまうかもしれない。リスクマネーの担い手が減れば、日本経済は沈滞しかねない。内外の株式市場をみると、米国のS&P500種株価指数やナスダック総合株価指数が過去最高値を更新したのに、28日の日経平均株価は1月23日に付けた高値を5.4%も下回ったままだ。投資家を育てなければならない。




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諸葛孔明

Author:諸葛孔明
サラリーマンを辞めて「専業トレーダー」やっています。現在は、配当重視株7割 売買3割でやっています。
(注)「FHファンド」は、個人事業届出時の屋号です。投資顧問業ではありません!

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