上昇相場でも、超強気が禁物な3つの理由

3年目の上昇相場でも、超強気が禁物な3つの理由
2014/1/1 0:00
日経新聞 編集委員 前田昌孝

東京・日本橋兜町には「株を枕に寝正月」という格言がある。昨年の日経平均株価は56.72%の上昇と戦後4番目の上げ相場になり、市場には先高観が満ちているからだ。しかし、バブル崩壊が始まった1990年の正月も「株を枕に……」がぴったりの雰囲気だった。今年は上がるかもしれないが、ベテラン投資家に本音を聞くと「難しい年になりそうだ」との反応も多い。消費税率引き上げの反動、内閣支持率の低下懸念、そして米国で中間選挙が実施されることも、東京市場には逆風だ。

 今年は少額投資非課税制度(NISA)が始まるため、新たに株式投資を始めたり、投資信託を購入したり、久々に投資を再開したりする人が多そう。しかし、どんな銘柄をどれくらいの量、いつ買うのかの判断を誤れば、大切な資産が損なわれかねない。常に成功を収めるのは無理にしても、大失敗を防ぐには、常に良質な情報収集を心掛け、まったく反対の意見を持っている人の論理なども視野に入れつつ、冷静沈着に動くことが欠かせない。

 まず、事実確認をしておこう。昨年の日経平均の上昇率は1952年の118.38%、72年の91.91%、51年の62.95%に続いて4番目の大きさだった。51~52年の上昇相場は日本の戦後復興の基礎を作った朝鮮戦争特需によるもの。ただ、この特需相場が始まる前の日本経済は、悪性インフレ克服のためにドッジラインと呼ぶ強烈なデフレ政策が講じられ、企業倒産が相次いで失業者が急増していた。

 日経平均は51~52年の2年間で約3.56倍になったが、それ以前の相場を振り返ると、高値(49年9月1日の176円89銭)から安値(50年7月6日の85円25銭)まで半値以下になっていた。特需相場は悲観の極からの上げ相場だったことも加わって、上昇率が大きくなったのだ。

 72年の上げ相場は、同年7月7日に首相に就任した田中角栄氏が強烈なリーダーシップで推進した列島改造ブームが巻き起こした。この年の株価上昇率の首位は7.2倍強になった松島炭鉱(現在の三井松島産業)で、ほかにも鉱業株や証券株が値を飛ばしたと当時の新聞が伝えている。大納会の終値は5207円94銭と、当時としては過去最高値だった。
もっとも72年末にはもう翌73年の金融引き締め・株安を警戒する声が出始めていた。73年1月3日付日本経済新聞朝刊の恒例の株価アンケートでは、相場の神様とも呼ばれた石井久・立花証券社長(当時)が、73年の年間高値を6月6000円、年間安値を後半4900円と慎重に予想していた。しかし、実際の73年の日経平均は高値が1月24日の5359円74銭、安値が12月18日の3958円57銭と期待を下回り、年間騰落率も17.30%のマイナスだった。

 もう1つ注意したいのは、安倍晋三首相は大納会の30日に東京証券取引所を訪れ、「来年(14年)もアベノミクスは買いだ」とあいさつしたが、決して昨年はアベノミクスだけが買われたわけではないことだ。新興国も入れれば、グラフのようにもっと上昇率が高い市場があるし、先進国だけを比べても、日本人が日本から円ベースで取引していれば、ドイツ株(ドイツDAX指数)は27日までで58.18%と、日本株以上のリターンを確保していた。ニューヨーク・ダウ工業株30種平均も円ベースでは52.17%値上がりした。

 日経平均採用銘柄のように比較的規模の大きい企業は、日本だけで事業をしているわけではないから、業績は経営上の大失策でもない限り、他の先進国の主要企業と大差ない。日経平均が大幅高になったのは、円という「価値が目減りした通貨」を物差しにして、企業の実力を測定したからだ。日本企業だから他の国際企業に比べて日本人を多く雇っているが、円安のおかげで日本人従業員に払う割高な賃金が大幅に節約でき、その分、利益が膨らんだのが正直なところであろう。

 むしろ今年から日本企業が真剣に取り組まなければならないのは、円安が進まなくても、自己資本利益率(ROE)が最低10%ぐらいは確保できるような強い経営の実現だ。昨年末時点の東証1部上場企業の株価純資産倍率(PBR)を予想株価収益率(PER)で割ると約8.5%だから、目標の10%まであと一歩に迫っている。

12月26日に経済同友会が東京都内で開いたシンポジウムでは「株主利益最優先の経営はおかしい」との問題意識から、「ROEに代わる企業価値測定指標が必要だ」といった声も出ていた。しかし、上場企業の発行済み株式の30%近くを外国人投資家が保有しているうえに、昨年は株式の買い手が外国人しかいなかった現実を踏まえると、ROEを軽視した経営では、投資家がいなくなってしまうだろう。



画像の拡大 むしろ、長期的に安定したROEが生み出させるように経営力に磨きをかけ、国民の資産をしっかりと増やすエンジンとなるのが、上場企業の役割だ。グラフには2004年末から13年末までの9年間の株価指数上昇率を円換算し、その年率平均を折れ線で書き入れた。日経平均は3.96%とドイツの9.74%、スウェーデンの7.09%、米国の5.03%などを下回る。集計対象にした54カ国中では34番目だ。この順位を1つでも2つでも上げることが日本企業の挑戦課題といえるだろう。

 さて今年は12年の22.94%高、13年の56.72%高に続く3年目の株高が実現するだろうか。当面のハードルは3つある。第1は4月に消費税率が引き上げられ、その後に駆け込み需要の反動などで景気が一時的に停滞局面に入る可能性が大きいが、相前後して株式相場も上昇の勢いを失う恐れがある。その流れを見越すように、これまで大量に日本株を買ってきた海外のヘッジファンドが持ち高の解消に動く可能性があることだ。

 もともと世界の株式相場には11月から4月にかけて値上がりし、5月から10月にかけて停滞する習性がある(詳細は13年10月20日付日経ヴェリタスのコラム『ベンチマーク』参照)。ニューヨークのウォール街には「5月に売って去れ」という格言もある。日本の景気停滞ともタイミングが重なるため、この局面をどう乗り越えるかは1つの課題だ。
第2に内閣支持率からは目が離せない。安倍首相の靖国参拝をめぐっては国民の間にも賛否両論があるが、日本経済新聞の過去118回の世論調査と日経平均との関係を分析すると、支持率が50%を割り、さらに方向も下降のままだと、株価の下落幅が大きくなる傾向がある(詳細は13年12月8日付日経ヴェリタスのコラム『ベンチマーク』参照)。支持率が下がれば、政策遂行能力が落ちると見て外国人投資家が株式を売ってくるのだ。

 第3に米国では大統領の任期は1期4年だが、2年目の11月(第1月曜日の翌日の火曜日、14年は11月4日)に中間選挙が実施され、任期2年の下院議員の全員と、任期6年の上院議員の3分の1が改選されることだ。この中間選挙の年はグラフのように、最も円高が進みやすく、日経平均が上がらない傾向がある。



 グラフは円の対ドル相場の年間変動パターンを示している。8月15日に米国のニクソン大統領(当時)がドル紙幣と金との交換停止を電撃的に発表し、固定相場制の崩壊が始まった1971年から13年までの43年間の平均像だ。すべてを平均すると年2.11%ずつの円高が進むのだが、特に中間選挙の年だけを平均すると、円高が7.58%も進んだことがわかる。自らの議席が気になる議員らが政府に産業競争力の強化策などを求めるためかもしれない。

 この円高傾向は日米の株価に異なる影響を与える。大統領選前年など他の選挙サイクルの年と異なり、中間選挙年には日米とも6月ごろから株式相場が崩れ出すのだが、ニューヨーク・ダウは10~12月になると、急速に立ち上がる。これに比べて日経平均は円高がじゃまになるのか、年末まで勢いづかないままに終わるのだ。もちろん今年がどうかはわからない。しかし、円相場にしても株価にしても、多くの人が想定する通りに動くのならば誰も利益を上げられないから、大方の予想が外れることは間違いなかろう。くれぐれも慎重に……。


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サラリーマンを辞めて「専業トレーダー」やっています。現在は、配当重視株7割 売買3割でやっています。
(注)「FHファンド」は、個人事業届出時の屋号です。投資顧問業ではありません!

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